「ジョビ」


冬になると、作業場の柵の鉄柱の上にジョウビタキがやってくる。

毎日のようにやってくるから「ジョビ」などと名前をつけて意識するようになった。

つかず離れず、目を合わせた程度では彼は逃げない。

あるとき、作業に熱中していて、すうに声をかけられたとき、「ジョビ」は作業場の天井を飛び回っていた。いつのまに?

用事が出来たのだが、入り口シャッターを全開にして出かけた。

帰ってくると彼の姿は無く、フンらしきものが作業台に一滴かけられていた。

それからも、気づけば頻繁に姿を見せたが、春に向かって暖かくなるにつけ姿を見せなくなった。

彼の縄張り意識は相当なものらしく、鏡に映った自らの姿に攻撃を仕掛けたりするのだとか。

彼との関係で物語でも生まれれば素敵なものだが、「縄張りを主張しに来ていたんだな」といった程度の凡人感想しか思い浮かばない。

春になると、シベリアのほうへ渡るらしい。

壁に張った日本地図を眺めながら、いろいろ思う。この豊橋・石巻町から、彼は日本アルプスを越えて、日本海を渡るのだろうか?

はたまた太平洋沿岸を飛び、北海道から樺太を経由していくのだろうか?・・・あの小さな体でシベリアから何を選んで石巻町なのか?

そんなことを思って妙に「ジョビ」が愛おしくなってきた。

と言ったわけで、縄張りを主張する「ジョビ」を登場させる時計を作ってしまいました。

 

 

まじめに仕事はしているんです。いちおう。

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